【難病・魚鱗癬】「前向いて私!」皮膚呼吸ができない息子、ワセリンに汚れる肌着、後ろ向きかけた瞬間
難病を持つ我が子を愛する苦悩と歓び(22)
難病「道化師様魚鱗癬」を患う我が子と若き母の悲しみと苦しみ。「ピエロ」と呼ばれる息子の過酷な病気の事実を出産したばかりの母は、どのように向き合ったのか。『産まれてすぐピエロと呼ばれた息子』の著作を綴った「ピエロの母」が医師から病名を宣告された日、母は我が子の「運命」を感謝しながら「これからの親子の人生を豊かなものにしよう」と新たなる決意をした。
今回は魚鱗癬の息子との「暮らし」、病を思いやる愛情、疲労もたまりついていかない若き母の気持ち。それでも「前へ」と立ち向かう母の思いを綴ります。
■数分のうなだれた時間
面会に行くと、陽(息子)は持参した服を着ていた。
・・・・・可愛い。
毛穴がなく、発汗による体温調節ができず、体温がこもりやすいため、
まだまだ肌着しか纏(まと)うことができないけれど、
初めての色味のある服、それは黄色く少し色褪せた、くまのプーさんの肌着。
ふとベッドの端に目をやると、ビニール袋が置いてあり、中を覗くと、既に着終わった服が2着入っていた。
持って帰ろうと手に取ると、驚くほどズッシリと重い。
全身にたっぷりとワセリンを、1日に何度も何度も塗るため、服にワセリンが染み込んで、ベタベタでズッシリとしていた。
そして独特な匂いがした。
そこへ看護師さんが来て、
「しばらく熱湯に浸けておくと、お薬とれると思いますよ」
とアドバイスを頂き、
病院から帰ると、早速、蓋付きバケツに服と熱湯を入れ、
半日ほど経ってから、何度もお湯でもみ洗いをしてから、洗濯機に入れた。
…………甘かった。ワセリンの油を軽く見すぎていた。
もみ洗いをした洗面器と、洗濯機の中が、白くギトギトになっていた。
そんな洗濯機の様子を見て立ち尽くし、なにもかも、やる気が無くなっていくのを感じた。
さらに、洗濯の終わった服はどれだけ乾かしても、ベトベトでしっとりしていた。
もぉ嫌や。
洗濯すら普通にさせてくれへんの?
なんでこんな思いばっかり・・・。
この時は、ちょっとしたことで頑張ろうと思えたり、些細なことで幸せや喜びを感じていたのと同時に、ほんのちょっとのことでも、すぐにマイナスに転ぶことも出来た。
私の考え方や、洗濯の仕方が甘かっただけなのに、もともとO型特有の面倒くさがり、楽したい主義の私には、とてつもなく洗濯が負担と感じた。
普通なら、別にこんなことくらい、って思うようなことで、意気消沈していた。
何分か洗濯機の前で、うなだれた時間を過ごし、少しずつ倒れきった心を叩き起こした。
こんなことでウジウジしてたら、この先やっていけない。
陽にシットリした服を、着せるわけにはいかない。
何か良い方法があるはず!
そう思い直し、しばらく携帯とにらめっこして、ひたすら洗濯方法を検索した。
そして何度も洗濯を繰り返して、良い方法を研究する日々が始まった。
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【参考文献】
『産まれてすぐピエロと呼ばれた息子』(アメーバブログ)
産まれてすぐピエロと呼ばれた息子(書籍)
ピエロの母
本書で届けるのは「道化師様魚鱗癬(どうけしようぎょりんせん)」という、
50~100万人に1人の難病に立ち向かう、
親と子のありえないような本当の話です。
「少しでも多くの方に、この難病を知っていただきたい」
このような気持ちから母親は、
息子の陽(よう)君が生後6カ月の頃から慣れないブログを始め、
彼が2歳になった今、ブログの内容を一冊にまとめました。
陽君を実際に担当した主治医の証言や、
皮膚科の専門医による「魚鱗癬」についての解説も収録されています。
また出版にあたって、推薦文を乙武洋匡氏など、
障害を持つ方の著名人に執筆してもらいました。
障害の子供を持つ多くのご両親を励ます愛情の詰まった1冊です。
涙を誘う文体が感動を誘います。
ぜひ読んでください。